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大阪の貸事務所は不条理世界への入口だったかもしれない

2011年10月10日 04時51分

関西地方の大学に通っていたことがある。当時、芸術全般に興味津々だったわたしは、親元を離れて一人暮らしをしていた解放感もあって、映画を観たり美術展に出かけたり、まことにアート三昧、好き放題な日々を送っていた。ちなみに大学は文学部英文科で、芸術と直接の関係はなかった。そんな中の一時期、大阪の貸事務所みたいなところで劇団の真似事をやっているおじさんと知りあう機会があった。何をどうして口を糊しているのやら、どうにも不思議なおじさんではあった。


おじさんは、タウン情報誌の端っこに掲載されていたひとこと募集欄で、演劇ユニットを立ち上げるにあたってメンバーを募っていた。なんでたまたま、おじさんの投稿が目についたのか、今となっては記憶をたどる術もない。なんかおもしろそー、と、怖いもの知らずなのか怖いもの見たさなのか、ちょっとひと癖ありそうな学生どもが数名集まった。ちなみにわたしは高校時代、校内でも一番人気を誇った劇団出身。世の中はまだまだ小劇団の演劇が人気だったころの話。


いつもは全然乗ったことのない路線の電車を乗り継ぎ、大阪の貸事務所の一室みたいなところへ集合して、活動は始まった。でも、不思議なおじさんは演出家でもなく役者でもなかった。何だかわからないエチュードをやったりしたけれど、これで舞台が作れるとは到底思えない世界だった。その大阪の貸事務所の、ちょっと暗いような蛍光灯の明かり、言葉少ないおじさんの佇まい、そういった記憶が不条理感とともによみがえる。そもそも妄想だったのかなと思えるくらいだ。